東京地方裁判所 平成8年(行ウ)226号 判決 1998年6月23日
東京都品川区荏原六丁目一九番二号
原告
石塚博
右訴訟代理人弁護士
仲谷栄一郎
同
番場弘文
東京都品川区中延一丁目一番五号
被告
荏原税務署長 千秋愼太郎
右指定代理人
小暮輝信
同
須藤哲右
同
尾辻七郎
同
三井広樹
同
神谷信茂
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
一 被告が原告の平成三年分の所得税について、平成七年三月一四日付けでした更正処分のうち、総所得金額一億四九九〇万三七七七円、納付すべき税額四三四一万六〇〇〇円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
二 被告が原告の平成四年分の所得税について、平成七年三月一四日付けでした更正処分のうち、総所得金額七四七九万〇二〇五円、納付すべき税額三三一〇万八五〇〇円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
第二事案の概要
本件は、原告が、平成三年及び同四年において、その所有する絵画合計二七点を売却したことによる所得が譲渡所得に当たるとして、右各年分の所得税の確定申告をしたのに対し、被告が、右所得は譲渡所得に該当せず、雑所得に該当するとして、別表一及び二記載のとおり右各年分の所得税について更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行ったため、原告が、これを不服として、右各処分の取消しを求めているものである。
一 前提となる事実(当事者間に争いがない。)
1 原告は、株式会社石塚研究所(以下「石塚研究所」という。)の代表取締役のほか、同社の関連企業七社の役員を務める者であり、いわゆる白色申告者である。
2 原告は、平成三年に、別表三記載のとおり、その所有する絵画一二点を八回にわけて、合計二億九〇九八万七四八五円で売却した。
また、原告は、平成四年に、別表四記載のとおり、その所有する絵画一五点を七回にわけて、合計二億七〇三二万九五三二円で売却した(以下、平成三年ないし平成四年における右絵画の売買を「本件絵画の売買」という。)。
3 本件絵画の売買の経緯等
(一) 原告は、絵画を購入するという理由で、横浜銀行平塚支店から昭和六二年一二月一〇日に二億円、第一勧業銀行平塚支店から昭和六三年一月一一日に三億円、同月三〇日、同年八月三一日及び平成元年一二月二二日にそれぞれ二億円、総額にして一一億円を借り入れた(以下「本件借入れ」という。)。
(二) 原告による絵画の購入・売却はすべて原告の判断・指示により行われているが、右購入・売却に係る事務に関して雇用した従業員はなく、石塚研究所の社員が右事務に従事している。
(三) 原告は、主にサザビース及びクリスティーズのロンドン又はニューヨークのオークションを通して絵画を売買しているが、原告の関係会社である株式会社ギャラリーヒロ及び株式会社ギャラリー新居等との間でも絵画を売買している。
(四) 原告は、画廊等の店舗も有しておらず、購入した絵画は石塚研究所が絵画を保管するためのものとして建築した原告肩書地所在の同社所有の倉庫に保管されているが、原告は同社に対して賃借料を支払っていない。
(五) 原告による絵画の売買状況は、別表三ないし六、七の1及び2、八の1及び2、九の1及び2、一〇の1ないし3、一一のとおりであり、特に、平成三年における本件絵画の売買の状況は、売買回数一一回、売買数量一五点、売却金額合計二億九〇九八万七四八五円(別表三)、平成四年における右売買の状況は、売買回数八回、売買数量一六点、売却金額合計二億七〇三二万九五三二円(別表四)である。
4 課税処分等の経緯(別表一及び二)
(一) 原告は、平成四年三月一六日、平成三年分の所得税について、同年分の本件絵画の売却による所得を譲渡所得に区分した上、総所得金額を一億四九九〇万三七七七円、納付すべき税額を四三四一万六〇〇〇円として被告に対し確定申告をした。
(二) 原告は、平成五年三月一二日、平成四年分の所得税について、同年分の本件絵画の売却による所得を譲渡所得に区分した上、総所得金額を七四五六万〇二〇五円、納付すべき税額を三二九九万三五〇〇円として被告に対し確定申告をし、また、同年一二月二日、総所得金額を七四七九万〇二〇五円、納付すべき税額を三三一〇万八五〇〇円とする旨の修正申告をした。
(三) 被告は、平成七年三月一四日、原告の平成三年分の所得税について、同年分の本件絵画の売買による所得は譲渡所得に該当せず、雑所得に該当するとした上、総所得金額を二億一五八四万八一一一円、納付すべき税額を七六三八万八五〇〇円とする旨の更正処分及び過少申告加算税額を三二九万七〇〇〇円とする賦課決定処分を行った。
また、被告は、同日、原告の平成四年分の所得税について、同年分の本件絵画の売買による所得は譲渡所得に該当せず、雑所得に該当するとした上、総所得金額を一億二一七四万〇五〇七円、納付すべき税額を五六五八万三五〇〇円とする旨の更正処分及び過少申告加算税額を二三四万七〇〇〇円とする賦課決定処分を行った(以下、右各更正処分を併せて「本件各更正処分」、右各賦課決定処分を併せて「本件各賦課決定処分」といい、本件各更正処分と本件各賦課決定処分を併せて「本件各更正処分等」という。)。
(四) 原告は、本件各更正処分等を不服として、平成七年五月一五日、被告に対し、異議申立てを行ったが、被告は、同年八月八日付けで右各異議申立てを棄却する旨の決定をした。
(五) 原告は、右各異議決定を経た後の本件各更正処分等をなお不服として、同年九月七日、国税不服審判所長に対し審査請求をしたが、同所長は、平成八年七月一日付けで、右各審査請求を棄却する旨の裁決をした。
二 本件各更正処分等の根拠に関する被告の主張(なお、以下において、かっこ内に「争いがない。」と記載したものは、その金額について当事者間に争いがないものである。)
1 平成三年分
(一) 総所得金額 二億一五八四万八一一一円
右金額は、次の(二)及び(三)の合計額である。
(二) 給与所得の金額 六〇一五万五〇〇〇円
右金額は、石塚研究所から得た給与収入額三〇〇〇万円及びトーメイダイヤ株式会社から得た給与収入額三五〇〇万円の合計額六五〇〇万円から所得税法(以下「法」という。)二八条二項の規定による給与所得控除額四八四万五〇〇〇円を控除した金額であり、原告が平成三年分の確定申告書に記載した給与所得金額と同額である(争いがない。)。
(三) 雑所得の金額 一億五五六九万三一一一円
右金額は、原告が平成三年に行った本件絵画の売買による所得の金額であり、その算出過程は次のとおりである。
(1) 総収入金額 二億九〇九八万七四八五円
右金額は、原告が平成三年において売却した絵画の売却収入の金額であり、その明細は別表三の「売却状況」欄のとおりである。
(2) 売上原価の額 一億一〇四七万七二三二円
右金額は、売却した絵画に係るそれぞれの購入価額の合計額であり、その明細は別表三の「購入状況」欄のとおりである。
(3) 借入金利子の額 二四八二万〇一四二円
右金額は、本件借入れ(平成四年末現在元本の返済はない。)に係る平成三年中の支払利子八六四五万八四〇六円のうち、絵画の購入に対応する部分の金額(本件借入金総額一一億円のうち、借入日の昭和六二年一二月から平成二年一二月三一日までの間に購入し、同日まで在庫としてある絵画の購入価格の合計額三億一五七八万三七〇五円が占める割合を乗じた額)である。
(4) 雑所得の金額((1)―(2)―(3)) 一億五五六九万三一一一円
(四) 納付すべき税額
(1) 課税総所得金額に対する税額 一億〇三六三万七五〇〇円
右金額は、前記(一)の総所得金額二億一五八四万八一一一円から法七二条ないし八七条所定の所得控除の合計額七七万三〇〇〇円(平成三年分確定申告書記載額と同額)を控除した課税総所得金額二億一五〇七万五〇〇〇円(国税通則法(以下「通則法」という。)一一八条一項の規定により、一〇〇〇円未満の端数を切り捨てたもの。以下同じ。)に、法八九条一項(ただし、平成六年法律第一〇九号による改正前のもの。以下同じ。)の税率を乗じて算出したものである。
(2) 源泉徴収税額 二七二四万八九四〇円
右金額は、平成三年分確定申告書に源泉徴収税額として記載された金額と同額である(争いがない。)。
(3) 納付すべき税額 七六三八万八五〇〇円
右金額は、(1)の金額から(2)の金額を控除した金額(通則法一一九条一項の規定により一〇〇円未満の端数を切り捨てたもの。以下同じ。)である。
2 平成四年分
(一) 総所得金額 一億二一七四万〇五〇七円
右金額は、次の(二)の金額と同額である。
(二) 雑所得の金額 一億二一七四万〇五〇七円
右金額は、原告が平成四年に行った本件絵画の売買による所得の金額であり、その算出過程は次のとおりである。
(1) 総収入金額 二億七〇三二万九五三二円
右金額は、原告が平成四年において売却した絵画の売却収入の金額であり、その明細は別表四の「売却状況」欄のとおりである。
(2) 売上原価の額 一億二九八六万二八五九円
右金額は、売却した絵画に係るそれぞれの購入価額の合計額であり、その明細は別表四の「購入状況」欄のとおりである。
(3) 借入金利子の額 一八七二万六一六六円
右金額は、本件借入れ(平成四年末現在元本の返済はない。)に係る平成四年中の支払利子六五二三万〇六七三円のうち、絵画の購入に対応する部分の金額(本件借入金総額一一億円のうち、借入日の昭和六二年一二月一〇日から平成三年一二月三一日までの間に購入し、同日まで在庫としてある絵画の購入価格の合計額三億一五七八万三七〇五円が占める割合を乗じた額)である。
(4) 雑所得の金額((1)―(2)―(3)) 一億二一七四万〇五〇七円
(三) 納付すべき税額 五六五八万三五〇〇円
右金額は、前記(一)の総所得金額一億二一七四万〇五〇七円から法七二条ないし八七条所定の所得控除の合計額七七万三〇〇〇円(平成四年分確定申告書記載額と同額)を控除した課税総所得金額一億二〇九六万七〇〇〇円に、法八九条一項の税率を乗じて算出したものである。
3 本件各更正処分に係る原告の総所得金額及び納付すべき税額は、右1及び2と同額であるから、本件各更正処分は適法である。
4 本件各賦課決定処分の適法性について
原告は、平成三年分及び平成四年分の所得税の申告の際、総所得金額及び納付すべき税額を過少に申告していたものであり、過少に申告したことについて通則法六五条四項に規定する正当な理由は存しない。
被告は、通則法六五条一項の規定に基づき、本件各更正処分により納付すべきこととなった税額を基礎として、次のとおり計算した過少申告加算税の額をそれぞれ賦課決定したものであるから、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。
(一) 平成三年分 三二九万七〇〇〇円
右金額は、平成三年分の更正処分により原告が納付すべきこととなった税額三二九七万円(通則法一一八条三項の規定により一万円未満の端数を切り捨てたもの。以下同じ。)に一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額である。
(二) 平成四年分 二三四万七〇〇〇円
右金額は、平成四年分の更正処分により原告が納付すべきこととなった税額二三四七万円に一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額である。
5 なお、原告は、本件絵画の売買による所得が雑所得に該当するとした場合、平成三年分及び平成四年分の雑所得について、総収入金額、売上原価の額及び借入金利子の額が被告主張のとおりになることは認めている。
三 争点及び争点に関する当事者の主張
本件の争点は、本件絵画の売買による所得が譲渡所得に該当するか、それとも雑所得に該当するかであり、この点に関する当事者の主張は、次のとおりである。
1 被告の主張
(一) 譲渡所得該当性について
(1) 譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいうとされ(法三三条一項)、一方、たな卸資産(たな卸資産に準ずる資産を含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得並びに山林の伐採又は譲渡による所得は、右譲渡所得には含まれないものとされている(同条二項)。
本件絵画の売買による所得が譲渡所得に該当するか否かは、右の「たな卸資産の譲渡その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得」に該当するか否かによって決せられるが、その判断基準としては、<1>譲渡人の既往における資産の売買回数、数量又は金額、<2>売買のための資金繰り、<3>当該譲渡に係る資産の取得及び保有の状況等を総合して判断するのが相当である。
(2) そこで、右の観点から本件事実関係に照らし検討すると、次のとおりである。
(ア) 既往における資産の売買回数、数量又は金額
平成三年における本件絵画の売買の状況は、前記一3(五)のとおり、売買回数一一回、売買数量一五点、売却金額合計二億九〇九八万七四八五円、平成四年における右売買の状況は、売買回数八回、売買数量一六点、売却金額合計二億七〇三二万九五三二円である。
それ以前の売買状況は、別表五(昭和六二年分)、別表六(昭和六三年分)、別表七の1及び2(平成元年分)、別表八の1及び2(平成二年分)記載のとおりであり、原告は、継続的に多数かつ多額の絵画の売買を行い、それにより毎年多額の譲渡益を得ている。殊に平成元年からは、明らかに売却点数が増加しており、原告が反復継続して絵画の売買を行っていたことは優に認められる。
原告は、絵画の売却に際して、オークションを利用するだけで既に経費がかかるのを承知の上であえてクリスティーズ及びサザビーズのオークションを通して売却しているところ、オークションは最低競落価格を上回る一番高い金額で売買されるものであるから、絵画をオークションに持ち込むこと自体、絵画をより高く売却するためのものであり、本件絵画の売買が営利性を有することは容易に推認できる。
また、オークションにおいては、売買が成立したもの以外に、金額が最低競落価格に達していないなどの理由で落札に至らないものもあることから、原告は、数点ずつまとめてオークションに出展していたことがうかがわれ、原告が競売に参加しながら落札されなかったものを含めると、原告は、さらに右に述べた回数、点数よりも数多くの絵画を売却のために出展していることが推認されるのであって、原告による絵画の売買は、偶発的・一時的なものでなく、継続的かつ反復して行われていたというべきである。
(イ) 売買のための資金繰り
原告は、絵画を購入するという目的で、総額一一億円に達する多額の借入れをしているところ、少なくともその一部である三億一五七八万三七〇五円が、絵画を購入する目的で借り入れたものであることは原告も認めるところである。
(ウ) 絵画の取得及び保有の状況
平成元年ないし平成四年の各年末において、原告が保有する絵画の数は、平成元年一三七点、平成二年一五五点、平成三年一四六点及び平成四年一三二点という多数に上っている。
そして、本件絵画の売買のうち、保有期間が五年間未満の短期間の絵画に係るものが、平成三年及び平成四年とも四点も含まれており、美術館開設のために取得・保有していた旨の原告の主張と矛盾する。
なお、原告は、右絵画の保管について、石塚研究所の所有する倉庫の一部を無償で借り受け、同社の保有する絵画とともに保管させてもらっていたにすぎず、原告独自の保管用の施設を有していたわけではない旨主張するが、絵画の保管用施設の有無は、営利目的及び継続性をより明確にする要素であり、本件においては、事業所得該当性を判断するための有力な要素となるものであり、本件絵画の売買による所得が譲渡所得に該当するか否かとは関係がないというべきである。
(3) 右の各事実を総合的に判断すれば、本件絵画の売買による所得は法三三号二項一号に定める「営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得」に該当し、譲渡所得には該当しないというべきである。
(二)(1) ある所得が譲渡所得に該当するか否かの判断基準として、原告は、被告が前記(一)(1)の<1>ないし<3>で主張したもののほかに、<4>広告と宣伝の有無、<5>諸施設の規模等も判断要素として考慮すべきであり、これらの要素を検討すると、本件絵画の売買が「営利を目的」とするものではないことは明らかであり、右売買による所得は譲渡所得に該当する旨主張する。
しかしながら、原告が譲渡所得該当性の判断基準として主張するところの右<4>及び<5>の要素については、これが認められた場合には「資産の譲渡の営利性・継続性」を補強する要素となり得るが、逆に、右二要素を欠いたとしても、それをもって直ちに、「資産の譲渡の営利性・継続性」が否定されることにはならないから、原告の右主張は失当である。
すなわち、法が譲渡所得と「営利性・継続性のある譲渡による所得」とを区別し、後者を譲渡所得から除外した趣旨は、ひとしく資産の譲渡によって生じた所得であっても、税負担の衡平を図る見地から一律の取扱いをすることなく、概して臨時的・偶発的に発生する所得については、経常的、計画的に発生する所得に比較して担税力において劣るところから、これを譲渡所得として税負担を軽減することとし、経常的、計画的に発生する所得と区別して課税の対象とする点にある。つまり、法上いわゆる譲渡所得に対する課税は、その資産がたまたま所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税しようとする趣旨のものであり、同じく資産の譲渡による所得であっても、経常的、計画的に発生するものは、法上譲渡所得には該当しないものとされているのである。この観点からすれば、広告宣伝を行い、又は大規模な施設を設けて行われた資産の譲渡は、経常的・計画的に行われたものであることを推認する事実となり得るが、広告宣伝を行わず又は大規模な施設を設けていなかったからといって、直ちに資産の譲渡が臨時的・偶発的に行われたものであるということにはならないのである。
(2) 原告は、美術館を開設する目的をもって絵画を収集し、コレクションの入れ替えのために絵画を売却したのであるから、本件絵画の売買は、営利を目的としたものではない旨主張する。
しかしながら、美術館開設の具体的な計画は明らかではないこと、コレクションに入れ替えにしても、原告による絵画の売買は、原告の好みの変化により売買されたとうかがわれること、原告の絵画の所有状況は、浮世絵、日本画、洋画などが混在しており、美術館用のコレクションとして一貫性があるとは認められないことからして、原告の右主張はにわかに使用できない。
また、仮に、原告が美術館を設立しようとする構想を持っていたとしても、そのことをもって直ちに本件絵画の売買による所得が譲渡所得に該当すると判断されるものではない。すなわち、絵画の譲渡が譲渡所得とされる場合であっても、その譲渡が利益追求としてなされることは当然あり得るし、仮に原告の絵画の購入目的が営利目的ではなかったとしても、その後、保有中にその目的が変容することも往々にしてあり得るものであり、多数の絵画を購入し、かつそれらを多数売却した場合には、もはやそれらの売却に係る所得は単発的に生じた譲渡所得といい得るものではなく、それら多数の絵画の購入最適時及び売却最適時を原告自らの責任において、計算して行っているのであるから、右の売買は「営利を目的として」「継続的に」売買したという要件を充足しているというべきであり、その場合は、売買に係る所得はもはや譲渡所得とはいえないのである。
しかも、絵画の所有者が将来美術館を建設する意思を有していたとしても、右美術館とは当該人が所有する絵画の展示を目的とするものにすぎず、その一方で同人が営利を目的として継続的に絵画の売買を行うこともあり得るのであるから、法三三条二項一号にいう営利性、継続性の要件は、将来、美術館を建設する意思を有していたとの事実と何ら矛盾することなく併存し得るものである。
したがって、原告が将来美術館を建設する構想を有していたことを理由に、これと営利性、継続性の要件は矛盾するとして、本件絵画の売買による所得が譲渡所得に該当するとする原告の主張は、およそ理由がない。
(三) 事業所得又は雑所得該当性について
(1) そこで、次に、本件絵画の売買による所得が事業所得(法二七条一項)と雑所得(法三五条一項)のいずれに該当するかについて検討する。
事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいう。
本件絵画の売買に関し、営利性・有償性及び継続性・反復性が存することについては前記(一)に述べたとおりであるが、右絵画の売買による所得が事業所得に当たるか否かは、右のほか自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無、その者の精神的肉体的労務の投入の有無、人的・物的設備の有無、その者の職業・経験及び社会的地位等を総合的に勘案して判断すべきである。
(2) 本件絵画の売買が右要件を充足するか否かをみると、前記一1及び3(二)ないし(四)のとおり、(ア)原告は、石塚研究所の代表取締役であるほか、七社の役員であること、(イ)本件絵画の売買に係る事務のため従業員を雇用した事実はなく、これに従事しているのは石塚研究所の社員であり、その者に対し右事務に従事したことに対する給与等の支払はなく、その従事の程度は軽微であること、(ウ)原告は、右事務のための画廊等の店舗を有せず、絵画の保管については石塚研究所の倉庫を無償で借用していること、(エ)本件絵画の売買先は、ほとんど特定しており、原告が本件絵画の売買のために多くの労力や時間を費やしている事実はないことが認められ、以上の諸事実から総合的に判断すると、本件絵画の譲渡に係る所得は、いまだ事業に該当するとは認められず、法三五条一項に規定する雑所得に該当するというべきである。
(四) 原告は、平成五年二月二六日付けで、事業開業届出書を提出し、平成五年分以後の所得税については、絵画の売却による所得は事業所得として申告する意思を明らかにしたところ、被告は、平成七年三月一四日付けで本件各更正処分等を行ったが、平成五年一一月ころ、原告の平成四年分の確定申告に対し、譲渡した絵画の一部が申告されていない事実を指摘し、修正申告書の提出を指示した際に、本件絵画の売買による所得の区分については何ら指摘しておらず、その時点においては、平成四年分の本件絵画の売買による所得を雑所得とは認識していなかったと認められるのであって、被告は、原告の右事業開業届出書および平成五年分の確定申告書に記載された絵画の売却状況をも勘案して、遡って平成三年分および平成四年分の所得の区分を判断しているものと考えられ、本件各更正処分等は、当該所得の発生時以後の事情を考慮してされた違法な処分といわざるを得ない旨主張する。
しかしながら、本件絵画の売買による所得が譲渡所得に当たらないことは、前記(一)のとおり明らかであり、右判断に当たって、原告が事業開業届出書を提出したことや、平成五年分の確定申告から絵画の売却による所得を事業所得として申告していることは、何ら意味を持つものではないし、また、被告は、平成四年分の所得税について申告漏れの指摘や修正申告書の提出を指示したことはなく、原告から自主的な修正申告書を収受したにすぎない上、仮に百歩譲って、原告の主張する事実が認められたとしても、これをもって被告が後に更正をすることが許されないことになるとはいえないから、原告の右主張は理由がない。
(五) 原告の予備的主張について
原告は、少なくとも保有期間が一〇年以上である別表一二記載の絵画(以下「本件長期保有絵画」という。)の売却については、雑所得ではなく譲渡所得に該当する旨予備的に主張するが、以下に述べるとおり、右予備的主張も理由がない。
(1) 「総論」について
(ア) 原告は、一般に、譲渡所得は、長期間にわたって累積したキャピタル・ゲインが一挙に実現するものであるため、政策的に累進税率の適用を緩和するのが妥当であるとされているところ、所得税基本通達三三―三(以下「本件通達」という。)は、固定資産である不動産の譲渡による所得であっても、当該不動産を相当の期間にわたり継続して譲渡している者の当該不動産の譲渡による所得は、法三三条二項一号に掲げる所得に該当し、譲渡所得には含まれないが、極めて長期間(おおむね一〇年以上をいう。)引続き所有していた不動産(販売の目的で取得したものを除く。)の譲渡による所得は譲渡所得に該当するものとする旨定めており、これは、右の一般原則が典型的に当てはまる土地について例示したものにすぎないから、本件長期保有絵画の売買による所得についても、本件通達が類推適用されるべきである旨主張する。
しかしながら、そもそも「たな卸資産の譲渡その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得」は譲渡所得に含まれないものと規定されているのであるから(法三三条二項一号)、右営利性・継続性が認められる限り当該資産の譲渡による所得が譲渡所得とされることはないのである。
そして、本件通達は、昭和四四年に土地の供給促進を図ることを目的として租税特別措置法が改正されたことに伴い、土地の供給を促進するという政策目的を背景として定められたものであり、本件通達の適用資産を「固定資産である不動産」に限定し法三三条二項一号の例外的な取扱いを規定したものにすぎない。このように土地の供給の促進という土地税制のために設けられた本件通達をもって、土地以外の資産の譲渡についてあてはめ、その理を用いることなど到底できるものではない。
したがって、原告が主張するように、本件通達を一般原則が適用される場合の例示であるとして、長期保有絵画の譲渡による所得に類推して適用することはできず、ましてや、原告の本件絵画の売買は、売買回数、売買数量、売買金額、資金繰り、保有の状況を総合勘案すると、営利性、継続性が認められるのであるから、法三三条二項一号に規定するとおり、右絵画の売買による所得が譲渡所得とし得るものでないことは明らかである。
(イ) 原告は、本件通達の規定が絵画について類推適用されないとしても、一般的な政策目的(キャピタル・ゲイン課税の緩和)は、絵画の売却から生じる所得の区分の判断において、十分にしん酌されるべきである旨主張する。
確かに、絵画の売却から生じた所得でも譲渡所得に該当する場合はある。しかしながら、本件のように営利を目的として継続的に行われる、既にたな卸資産化した在庫の絵画について、その売却時までに一〇年以上保有していたからといって、他の売却した絵画と区別してキャピタル・ゲイン課税の緩和として所得区分をしん酌する法的根拠はなく、原告の右主張は失当である。
(2) 「各論」について
原告は、個人向けに流通している絵画の多くは、比較的小型で、かつ、特に日本人向けのものは印象派などの明るい画風の作品であるのに対し、本件長期保有絵画のほとんどは、比較的サイズが大きく、シュールレアリズム系の暗い作品で、その多くは購入時、売却時とも流通していなかったものであるから美術館における展示向けの絵画であり、このことと取得目的、売却目的、保有期間の長さなどを総合的に考慮すれば、その譲渡による所得は譲渡所得であると考えるのが妥当である旨主張する。
しかしながら、絵画のような美術品が美術館向きなのかあるいは個人向きなのかは、個々人の主観ないし嗜好に委ねられるべき事項であり、本件絵画の売却による所得区分を判断する上において、何ら影響を及ぼす事柄ではない。また、原告は、サザビーズ及びクリスティーズのロンドン又はニューヨーク等の世界市場を対象とするオークションを利用して本件長期保有絵画の多くを売買しているのであり、日本人向けの絵画を購入する必要性はなく、そこに原告の営利目的の意図が認められることは明らかである。
しかも、本件長期保有絵画の保有期間、取得目的、売却目的に関しては、以下のとおりであり、これらの事情を検討しても、原告の右主張に理由がないことは明らかである。
(ア) 保有期間について
保有期間は、譲渡所得に該当するかそれ以外の所得に該当するかの判断基準となるものではなく、右の点は、営利を目的として継続的に売買していたか否かによって判断されるものであり、また、保有期間が一〇年以上の絵画の譲渡による所得は譲渡所得に該当するという基準もない。
(イ) 取得目的について
原告は、本件長期保有絵画を美術館において展示する目的で取得し、原告自らの嗜好に従って絵画を集めていた旨主張する。
しかしながら、原告の右主張には理由がないことは、前記(二)(2)で述べたとおりである。
(ウ) 販売目的について
原告は、本件長期保有絵画を、コレクションの入れ替え及び資金繰りのために処分した旨主張するが、原告は、本件借入金の元本を返済しておらず、また、原告は、絵画を売却した目的は、将来開設することを予定している美術館のコレクションのテーマを変更したためであるとも主張しているところ、この主張とも異なっており、原告の主張する販売目的はにわかに信用し難いというほかはない。
さらに、原告は、営利の目的で取得し販売するのに適する絵画であれば、国内の画商を通じて容易に高額で販売できたはずである旨主張するが、国内の画商を通じて販売したからといって容易に高額で販売できる保証はなく、むしろ、原告は、最低競落価格を上回る一番高い金額で売買される海外のオークションによって販売するという方法により、絵画の売却市場を世界に広げ大型・高額な絵画についても販売できるようにしたというべきである。
2 原告の主張
(一) ある所得が譲渡所得に該当するか否かは、<1>譲渡人の既往における資産の売買回数、数量又は金額、<2>売買のための資金繰り、<3>当該譲渡に係る資産の所得及び保有の状況等のほか、<4>広告と宣伝の有無、<5>諸施設の規模等を総合的に考慮して判断すべきであり、また、右の判断に当たっては、単にある年分の絵画の売却回数や金額のみをもって判断すべきではなく、絵画の取得目的や売却目的なども考慮しなければならないというべきである。
本件においては、以下の事情があり、これらの事情を総合的に考慮して判断すると、本件絵画の売買は「営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡」には当たらず、本件絵画の売買による所得は、譲渡所得に該当するというべきである。
(1) 譲渡人の既往における資産の売買回数、数量又は金額
平成二年以前の原告による絵画の売買の状況は別表五、六、七の1及び2、八の1及び2のとおりであり、反復継続して営利の目的のために行っていたものとは認められない。
なお、原告が平成三年に売却した絵画は一二点、平成四年に売却した絵画は一五点であって、その在庫数(平成三年の期末在庫は一二七点、平成四年の期末在庫は一一四点)に比べて非常に少なく、営利を目的として継続的に売買したものではない。
被告は、原告がオークションを通じて絵画を売買していたことなどをもって、原告に営利の目的があった旨主張するが、およそ物を売ろうとするからには、できるだけ高く売ろうとすることは経済上当然であり、また、真に営利を追求するのであれば、国内の画商・画廊を通じて売った方が海外のオークションに出すよりも低額の手数料で高額の買手を探せる可能性が高いのであり、オークションに出品するというは、売れない絵画をやむなく処分する、いわば「たたき売り」のためであるから、その結果としてたまたま利益が出たからといって、それは営利を目的とした継続的な活動から生じたものとはいえないのである。そして、落札に至らないものがあった事実も、オークションに出す以上当然のことで、営利の目的とは何ら関係がないというべきである。
(2) 売買のための資金繰り
原告は、本件絵画の購入のために本件借入れの一部である三億一五七八万三七〇五円を用いていたにすぎない。
(3) 絵画の取得及び保有の状況
原告は、その所有する絵画について、石塚研究所の所有する倉庫の一部を無償で借り受け、同社の保有する絵画とともに保管させてもらっていたにすぎず、原告独自の保管用の施設を有していたわけではない。
被告は、原告が多数の絵画を保有し、多数かつ継続的に絵画の売買を行っている旨主張するが、原告は美術館を開設する目的を有しているのだから、一定数の絵画が必要であることは当然であり、原告の保有数は「多数」とはいえないというべきである。
(4) 広告と宣伝の有無
原告は、絵画の売却に際し、一切広告・宣伝を行っていない。
(5) 諸施設の規模等
原告は、絵画の保管、展示、広告・宣伝、売却のための施設、人員を一切有していない。
(6) 絵画の取得目的
原告は美術館を開設する目的をもって絵画を収集していたものであり、営利の目的をもって絵画を収集していたものではない。このことは、原告が、美術館の展示には向くが、売却の難しい大型の絵画を多数購入していること及び多数の絵画を投機目的とは考えられないほど長期間保有していたことからも明らかである。
被告は、原告による美術館の具体的な開設計画が明らかになっていないために、原告の主張は信用できないと主張するが、現時点では具体的な解説の計画が当面延期になっているだけであり、原告は、今後、経済状況などを考慮に入れ、時期が熟したときには、美術館を具体化しようとするものであるから、被告の右主張は理由がない。
(7) 絵画の売却目的
原告が、保有する絵画を売却したのは、資金繰りのため、開設予定の美術館のコレクションのテーマの変更のため及びより良質の作品の収集、コレクションの入れ替えのためであり、営利のためではない。現に多くの絵画は売却により損失を生じており、利益が出たのは、長期間保有していた取得費の低い絵画だけである。
被告は、絵画の売買は原告の嗜好の変化によるものであり、コレクションの入れ替えのためである旨の主張には信用性がないと主張する。しかし、コレクションが原告の嗜好に沿って集められている以上、その嗜好に変化が出たときに入れ替えるのは、何ら不自然なことではない。
被告は、同一人が美術館を開設する目的で絵画を保有することと、その絵画を営利を目的として継続的に売買することは両立する旨主張する。しかし、「同一人」が別個の目的で保有することができるのは自明の理であるが、「同一の物件」が同時に両方の目的を兼ねることはあり得ないところ、本件は、美術館に展示する目的の絵画を販売したものであり、その意味では、不動産業者が固定資産である不動産を売却したことと同視されるべきであるから、被告の右主張は理由がない。
(8) 仮に譲って、原告が美術館を開設する目的が不明確であったとしても、個人が鑑賞用に購入した絵画をコレクションの入れ替えのためにたまたま処分する行為は、「営利性・継続性」はないというべきである。
(二) ある年度に帰属する所得が法上のどの所得区分に該当するかは、当該所得の発生時における現況から判断しなければならない。
原告は、平成五年分から、ある程度の回数・金額で絵画を処分することが予想されたため、それによる所得を今後事業所得として申告することを明らかにするために、平成五年二月二六日付けで、事業開業届出書を提出し、平成五年分以後の所得税については、絵画の売却による所得は事業所得として申告する意思を明らかにした。被告は、平成七年三月一四日付けで本件各更正処分等を行ったが、平成五年一一月ころ、原告の平成四年分の確定申告に対し、譲渡した絵画の一部が申告されていない事実を指摘し、修正申告書の提出を指示した際には、本件絵画の売買による所得の区分については何ら指摘しておらず、その時点においては、平成四年分の本件絵画の売買による所得を雑所得とは認識していなかったと認められるのであって、被告は、原告の右事業開業届出書および平成五年分の確定申告書に記載された絵画の売却状況をも勘案して、遡って平成三年分及び平成四年分の所得の区分を判断したものと考えられる。右のとおり、本件各更正処分等は、当該所得の発生時以後の事情を考慮してされたものであり、違法な処分といわざるを得ない。
(三) 予備的主張
仮に、本件絵画の売買のうち、一部の売買により生じた所得が雑所得に該当するとしても、別表一二に掲げる絵画(本件長期保有絵画)の売却により生じた所得は、以下に述べるとおり、雑所得には該当せず譲渡所得に該当するというべきである。
(1) 本件長期保有絵画の売買について(総論)
(ア) 一般に、譲渡所得は、長期間にわたって累積してきたキャピタル・ゲインが一挙に実現するものであるため、政策的に累進税率の適用を緩和するのが妥当であるとされているところ、本件通達は、固定資産である不動産の譲渡による所得であっても、当該不動産を相当の期間にわたり継続して譲渡している者の当該不動産の譲渡による所得は、法三三条二項一号に掲げる所得に該当し、譲渡所得には含まれないが、極めて長期間(おおむね一〇年以上をいう。)引続き所有していた不動産(販売の目的で取得したものを除く。)の譲渡による所得は譲渡所得に該当するものとする旨定めている。一般に、「所有者の意思によらない外部的条件の変化に起因する資産価値の増加は、譲渡所得に当たり、所有者の人的努力と活動に起因する資産価値の増加は、事業所得や雑所得に当たる」と解釈されており、本件通達はこのような一般原則に立脚し、右に述べた一般原則が典型的に当てはまる土地について例示したものにすぎないから、その趣旨からすれば、土地同様非償却資産である絵画についても類推適用されるべきである。
本件長期保有絵画については、市況や需給をみて適時に売却したため、換言すれば営利の目的をもって販売したために利益が出たわけではなく、原告が長期にわたり保有していたため利益が出たものであり、そのような利益は、「所有者の意思によらない外部的条件の変化に起因する資産価値の増加」であり、譲渡所得に該当するというべきである。
(イ) また、仮に本件通達の規定が絵画について類推適用されないとしても、右(ア)に述べた一般的な政策目的(キャピタル・ゲイン課税の緩和)は、絵画の売却から生じる所得の区分の判断において、十分にしん酌されるべきである。
(2) 本件長期保有絵画の売買について(各論)
本件長期保有絵画の売買については、以下のとおり、その取得目的、売買目的、保有期間の長さ等を総合的に考慮すれば、「営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡」には当たらず、その譲渡による所得は譲渡所得に該当するというべきである。
(ア) 保有期間
本件長期保有絵画の保有期間は、すべて一〇年以上である。
(イ) 取得目的
原告は、美術館を将来開設し、そこにおいて展示するために本件長期保有絵画を取得したものであり、販売の目的で取得したものではない。このことは、石塚元章という通称名で知られる日本でも有数の美術収集家であり、自らの嗜好に従って絵画を集めていたこと、原告の絵画の売却状況は別紙記載のとおりであり、これによると、原告は本件長期保有絵画と同時期(昭和三〇年代から昭和四〇年代)に取得した絵画を、昭和五三年に至るまで全く売却していないこと、本件長期保有絵画のうち、西洋絵画、キャスタブ・モロー作「海からあがるヴィーナス」を除き、すべて購入当時日本では無名の作品であったが、前述のとおり著名な美術収集家である原告が購入したということで、その一部の作品は次第に有名になり、後に画集に掲載されるようになったにもかかわらず、原告はその後も相当期間にわたりそれらの絵画を保有し続けていることからも明らかである。
(ウ) 販売目的
原告は、本件長期保有絵画を、コレクションの入れ替えおよび資金繰りのために処分したのであり、営利目的で販売したものではない。投機あるいは営利の目的で取得し販売するのに適する絵画であれば、国内の画商を通じて容易に高額で販売できたはずである。海外におけるオークションという方法をとらざるを得なかったことは、本件長期保有絵画が投機あるいは営利の対象としては適していなかった事実を物語る。現に、本件長期保有絵画中、ポール・デルボリー作「眠れる街」及びガンビーリ作「Piscina」は、国内では買手がつかず、海外の個人コレクターが購入している。
(エ) 本件長期保有絵画の性質
個人向けに流通している絵画の多くは、比較的小型で、かつ、特に日本人向けのものは、印象派などの明るい画風の作品であるのに対し、本件長期保有絵画のほとんどは、比較的大きなサイズのものが多く、またシュールアリズム系の暗い作品が多く、これらは購入時、売却時とも個人向けには流通していないものであって、美術館向けのものである。
第三当裁判所の判断
一1 譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいうが(法三三条一項)、たな卸資産(たな卸資産に準ずる資産を含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得(同条二項一号)並びに山林の伐採又は譲渡による所得(同項二号)は、右譲渡所得には含まれないものとされている。したがって、本件絵画の売買による所得が譲渡所得に該当するか否かは、それが「たな卸資産の譲渡その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得」に該当するか否かによって決せられるべきことになる。
ところで、譲渡所得に対する課税は、資産の値上がりによりその資産の所得者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税するものであるところ、譲渡所得は、長期間にわたって累積したキャピタル・ゲインが資産の譲渡によって一挙に実現するため、高い累積税率の適用を緩和する必要があるとの考慮から、法は、譲渡資産の保有期間が五年を超えているかどうかを基準として、これを長期譲渡所得と短期譲渡所得に区別し、前者についてその二分の一のみを課税の対象とすることとし、税負担を軽減しているのである。そして、法が「たな卸資産(たな卸資産に準ずる資産を含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得」を譲渡所得から除外した趣旨は、ひとしく資産の譲渡によって生じた所得であっても、税負担の衡平を図る見地から一律の取扱いをすることなく、外部的条件の変化に起因する資産価値の増加が臨時的、偶発的に実現する場合については、外部的条件又は人的努力及び活動に起因する資産価値の増加が経常的、計画的に実現する場合に比較して担税力において劣るところから、両者を区別し、前者について譲渡所得として税負担の軽減を認め、後者については事業所得、雑所得として譲渡所得の場合の税負担の軽減を認めないこととする点にある。
右の規定の趣旨からすれば、ある資産の譲渡による所得が「営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得」に当たるか否かの判断に当たっては、その者の行っている資産の譲渡の客観的な態様・状況からみて経常的、計画的に発生する所得か否かを判断すべきであり、具体的には、<1>譲渡人の既往における資産の売買回数、数量又は金額、<2>売買のための資金繰り、<3>当該譲渡に係る資産の取得及び保有の状況等を総合して判断するのが相当である。
2 本件についてこれをみるに、前記第二の一の争いのない事実に甲一及び弁論の全趣旨を併せれば、以下の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。
(一) 既往における資産の売買回数、数量又は金額
平成三年における本件絵画の売買の状況は、売買回数一一回、売買数量一五点、売却金額合計二億九〇九八万七四八五円(別表三参照)、平成四年における右売買の状況は、売買回数八回、売買数量一六点、売却金額合計二億七〇三二万九五三二円(別表四参照)である。
それ以前の売買状況は、昭和六二年が売買回数五回、売買数量一六点、売却金額合計一億四〇〇〇万円(別表五参照)、昭和六三年が売買回数七回、売買数量九点、売却金額合計一億八〇〇〇万円(別表六参照)、平成元年が売買回数七回、売買数量二六点、売却金額合計一億九六五六万八九一七円(別表七の1及び2参照)、平成二年が売買回数七回、売買数量三六点、売却金額合計一億二一五二万〇四五五円(別表八の1及び2参照)である。
売却のみについてみると、平成三年における本件絵画の売却の状況は、売却回数八回、売買数量一二点(別表三参照)、平成四年における右売買の状況は、売却回数七回、売却数量一五点(別表四参照)であり、それ以前の売却状況は、昭和六二年が売却回数一回、売却数量一点、(別表五参照)、昭和六三年が売却回数二回、売却数量二点(別表六参照)、平成元年が売却回数二回、売却数量八点(別表七の1及び2参照)、平成二年が売却回数三回、売却数量九点(別表八の1及び2参照)である。
右のうち、ほとんどすべての絵画が購入金額を上回る金額で譲渡されており、中には相当額の譲渡益が生じているものもあり、購入金額を下回る価格で譲渡されたものも、平成四年に譲渡された国吉康雄作の「茄子」を除き、売却金額と購入金額との差額はいずれも数十万円を下回るものである。
(二) 売買のための資金繰り
原告は、絵画を購入するという理由で、横浜銀行平塚支店から昭和六二年一二月一〇日に二億円、第一勧業銀行平塚支店から昭和六三年一月一一日に三億円、同月三〇日、同年八月三一日及び平成元年一二月二二日にそれぞれ二億円、総額にして一一億円を借り入れた(本件借入れ)。
なお、本件借入金総額のうち、借入日の昭和六二年一二月一〇日から平成二年一二月三一日まての間に購入し、同日まで在庫としてある絵画の購入価格の合計額は三億一五七八万三七〇五円である。
(三) 資産の取得及び保有の状況
平成元年ないし平成四年の各年末において、原告が保有する絵画の数は、平成元年一三七点、平成二年一五五点、平成三年一四六点及び平成四年一三二点であり、いずれの年も多数に上っている。
3 右の各事実を総合的に判断すれば、原告は、多数の絵画を銀行からの借入金によって購入、保有し、多数回にわたって売買し、また、現実にも、多額の譲渡益を生じていることからして、本件絵画の売買は、「営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡」に該当するものというべきである。
したがって、本件絵画の売買による所得は法三三条二項一号に定める「営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得」に該当し、譲渡所得には該当しないというべきである。
二1 原告は、前記一1の<1>ないし<3>の要素に加え、<4>広告と宣伝の有無、<5>諸施設の規模等も判断要素として考慮すべきであり、これらの要素を検討すれば、本件絵画の売買が「営利を目的」とするものでないことは明らかであり、右売買による所得は譲渡所得に該当する旨主張する。
しかしながら、広告・宣伝を行い、又は相当規模な保管施設等を設けて行われた資産の譲渡は、経常的・計画的に行われたものであることを推認する事実となり得るが、広告・宣伝を行わず又は保管施設等を設けていないからといって、直ちに資産の譲渡が臨時的・偶発的に行われたものであるということにはならないというべきである。そして、前記一1の<1>ないし<3>の要素に関して認められる事実、すなわち、原告は従前から多数回にわたり継続して絵画の売買を繰り返していること、それによって多額の譲渡益を挙げていることなど前記一2で認定した諸事実を総合的に考慮すれば、本件絵画の売買による所得が「営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得」に該当するというべきことは、前記一3に認定したとおりであり、原告が本件絵画の売買に関し、広告・宣伝を行わず、絵画の保管施設を有していなかったなどの事実は右認定を左右するものではない。
したがって、原告の右主張は理由がない。
2 原告は、ある所得が譲渡所得に該当するか否かを判断するに当たっては、絵画の保有目的・処分目的なども考慮すべきところ、原告が絵画を取得したのは、美術館を開設する目的を実現するためであり、また、原告が保有する絵画を売却したのは、資金繰りのため、開設予定のコレクションのテーマの変更のため及びより良質な作品の収集、コレクションの入れ替えのためであって、これらの事情を総合的に考慮して判断すると、本件絵画の購入、保有、売却をもって、「営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡」に当たるということはできない旨主張する。
しかしながら、「たな卸資産の譲渡その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得」に該当するか否かの判断に当たっては、その者の行っている資産の譲渡の客観的な態様・状況を基に判断すべきであること、原告が多数の絵画を保有し、多数回にわたって絵画の売買を行い、その売買のほとんどにおいて多額の譲渡益を生じていることからして、本件絵画の売買はその客観的な態様・状況に照らして、単発的な売買ではなく営利性、継続性を有するものというべきことは前記一で示したとおりである。そして、絵画を保有中にその目的が変容することも往々にしてあり得るものであるから、絵画を購入した目的は絵画の売買の客観的な態様、状況に営利性、継続性が認められるか否かということとは必ずしも結びつくものではない上、美術館開設のために絵画を保有し、資金繰りやコレクションの入れ替えのためこれを売却することと、保有する絵画の一部を営利の目的を持って継続的に売買することとは両立し得るのである。なお、原告は、観賞用に購入した絵画をコレクションの入れ替えのためにたまたま処分する行為には、営利性、継続性はない旨主張するが、原告の行う絵画の売買は多数回にのぼり、それによって多額の譲渡益を得ていることなどからして、右売買はたまたまコレクションを処分するといった種類のものではなく、客観的にみて、経常的、計画的に行われているものとみるべきものである。
したがって、原告の右主張は理由がないというべきである。
三1 そこで、進んで、本件絵画の売買による所得が事業所得か雑所得のいずれに該当するかについて検討する。
2(一) 事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいうものと解されるところ、ある所得が事業所得に当たるか否かを判断するに当たっては、当該所得が社会通念上「事業」というに値する規模・態様においてなされる営利性、有償性、反復継続性をもった活動によって生じる所得か否かによって判断すべきであり、右の場合において「事業」というに値する規模・態様においてなされる活動といえるかどうかは、自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無、その者の精神的肉体的労務の投入の有無、人的・物的設備の有無、その者の職業・経験及び社会的地位等を総合的に判断すべきである。
(二) これを本件についてみると、本件絵画の売買が「営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡」に該当することについては前記一で説示したとおりであるが、自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無、その者の精神的肉体的労務の投入の有無、人的・物的設備の有無、その者の職業・経験及び社会的地位等については、前記第二の一の争いのない事実に甲一及び弁論の全趣旨を併せれば、以下の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。
(1) 原告は、石塚研究所の代表取締役であるほか、七社の役員である。
(2) 本件絵画の売買に係る事務に関し従業員の雇用はなく、これに従事しているのは石塚研究所の社員であり、その者に対し右事務に従事したことに対して給与等の支払はされていない。
(3) 原告は、右事務のための画廊等の店舗を有せず、絵画の保管については石塚研究所の倉庫を無償で借用している。
(4) 本件絵画の売買先は、ほとんど特定しており、原告が本件絵画の売買のために多くの労力や時間を費やしているということはない。
(三) 右事実を総合すると、本件絵画の売買による所得は、いまだ社会通念上「事業」というに値する規模・態様においてなされる活動によって生じる所得に該当するとは認められないというべきである。
したがって、本件絵画の売買による所得は、法三五条一項に規定する雑所得に該当するというべきである。
四 原告は、平成五年二月二六日付けで、事業開業届出書を提出し、平成五年分以後の所得税については、絵画の売却による所得は事業所得として申告する意思を明らかにしたところ、被告は、平成七年三月一四日付けで本件各更正処分等を行っているが、平成五年一一月ころ、原告の平成四年分の確定申告に対し、譲渡した絵画の一部が申告されていない事実を指摘し、修正申告書の提出を指示した際には、本件絵画の売買による所得の区分については何ら指摘しておらず、その時点においては、平成四年分の本件絵画の売買による所得を雑所得とは認識していなかったと認められるのであって、被告は、原告の右事業開業届出書および平成五年分の確定申告書に記載された絵画の売却状況をも勘案して、遡って平成三年分および平成四年分の所得の区分を判断したものであり、本件各更正処分等は、当該所得の発生時以後の事情を考慮してされた違法な処分といわざるを得ない旨主張する。
しかしながら、そもそも、原告主張の右事実については、これを裏付ける客観的な証拠は存在しない。また、仮に、被告が原告に修正申告を指示したことがあり、その際には本件絵画の売買による所得の区分について何ら指摘をしなかったとしても、被告がその後において、本件絵画の売買による所得が雑所得に該当すると認定することは何ら差し支えないことである。さらに、平成五年分の所得税の確定申告に記載された絵画の売買の状況を考慮するまでもなく、本件絵画の売買による所得が雑所得に該当するというべきことは前記一ないし三に説示したとおりであり、右の雑所得該当性と、原告が平成五年分の所得税の確定申告に先立ち、事業開業届出書を提出し、平成五年分以後の所得税について絵画の売却による所得を事業所得として申告する意思を明らかにしたこととが直接関係のないことも明らかである。
いずれにしてもこの点に関する原告の主張は失当というべきである。
五 原告の予備的主張について
1 原告は、仮に、本件絵画の売買のうち、一部の売買により生じた所得が雑所得に該当するとしても、別表一二に掲げる絵画(本件長期保有絵画)の売却により生じた所得は、譲渡所得に該当する旨主張する。
しかしながら、本件絵画の売買による所得が「営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得」に当たるか否かは、その者の行っている絵画の売買の客観的な態様・状況からみて経常的、計画的に発生する所得か否かによって判断すべきであるから、その者の行う絵画の売買が一連のものとして営利性・継続性が認められる以上、その一連の絵画の売却による所得はすべて「営利を目的として継続して行われる資産の譲渡」と認められるべきであり、その一部に一〇年以上の長期保有の絵画が含まれていた場合において、右長期保有の絵画の売却による所得を他の絵画の売却による所得と区分して別個にそれが譲渡所得に該当するか否かを判断する法的根拠はないというべきである。
しかして、本件長期保有絵画の売却行為自体が、その他の原告所有の絵画の売却と截然と区別された異質のものであることをうかがわせる証拠は全くなく、かえって、その売却先や海外のオークションを通じているという売却方法をみると、右売却行為は、原告所有のその他の絵画の売買と一連のものであると認めるのが相当であるから、本件絵画の売買のうち、本件長期保有絵画の売却のみを取り出して、これによる所得が譲渡所得に該当する旨いう原告の主張は失当である。
なお、原告は、本件長期保有絵画について、美術館における展示のために購入し、コレクションの入れ替え及び資金繰りのために処分したこと、その大きさ、画風からしても美術館向けのものである旨主張するが、これらの事情は、右長期保有絵画の売却に営利性・継続性があることと何ら矛盾するものではなく、右売却による所得が雑所得に該当するとの認定を左右するものではない。
2 原告は、本件長期保有絵画の売却による所得については、本件通達が類推適用されるべきであり、仮に類推適用されないとしても、譲渡所得の場合、長期間にわたって累積してきたキャピタル・ゲインが一挙に実現するものであるため、政策的に累進税率の適用を緩和するのが妥当であるとい一般原則がしん酌されるべきである旨主張する。
しかしながら、本件通達の規定は、極めて長期間保有していた固定資産である不動産の譲渡による所得については、当該不動産の譲渡が継続的に行われているものであっても、その譲渡による所得の実質は、その譲渡資産を長期にわたり保有していた期間中に外部的条件に起因して蓄積した資産価値の増加益に相当するものの実現であり、かかる所得は臨時的に発生した所得とみるのが相当であることから、これを譲渡所得として取り扱う旨を定めたものであると解されるが、絵画の場合についていえば、当初の目的は何であれ、特定の者が一定の鑑識眼及び美術的な専門知識に基づき収集、保存した絵画を継続的に譲渡している者の当該絵画の譲渡による所得は、それが長期間保存されたものであっても、人的努力又は活動が加わって生じたものとみられるのであって、これを外部的条件だけで蓄積した資産価値の増加益の実現として他の絵画の譲渡による所得と区別し、その譲渡による所得を臨時的・偶発的なものとみるのは困難である。したがって、長期保有の絵画の売却による所得について本件通達の規定を適用ないし類推するのは相当でないというべきである。また、本件絵画の売買が営利を目的として継続して行われたものであることは、前記一に説示したとおりであるところ、このような売買による所得について、キャピタル・ゲイン課税を緩和するため譲渡所得の規定を適用すべきものとする法的根拠はないというべきである。したがって、原告の右主張は採用することはできない。
六 結語
以上によれば、本件絵画の売買による所得は雑所得に該当するというべきであるとろ、前記第二の二5のとおり、本件絵画の売買による所得が雑所得に該当するとした場合、平成三年分及び平成四年分の雑所得について、総収入金額、売上原価の額及び借入金利子の額が被告主張のとおりになることは当事者間に争いがないから、前記第二の二1及び2のとおり、原告の平成三年分の総所得金額は二億一五八四万八一一一円、納付すべき税額は七六三八万八五〇〇円、平成四年分の総所得金額は一億二一七四万〇五〇七円、納付すべき税額は五六五八万三五〇〇円となる。これは、本件各更正処分による総所得金額、納付すべき税額と同額であるから、本件各更正処分はいずれも適法である。
また、これを基に過少申告加算税額を計算すると、前記第二の二4のとおり、平成三年分は三二九万七〇〇〇円、平成四年分は二三四万七〇〇〇円となる。これは、本件各賦課決定処分による過少申告加算税額と同額であるから、本件各賦課決定処分はいずれも適法である。
よって、原告の請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民訴法六一条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 青栁馨 裁判官 増田稔 裁判官 篠田賢治)
別表一
平成三年分 課税処分等の経緯
<省略>
別表二
平成四年分 課税処分等の経緯
<省略>
別表三 絵画の売買状況(平成3年分)
<省略>
別表四 絵画の売買状況(平成4年分)
<省略>
別表五 絵画の売買状況(昭和62年分)
<省略>
別表六 絵画の売買状況(昭和63年分)
<省略>
別表七の1 絵画の売買状況(平成1年分)
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別表七の2
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別表八の1 絵画の売買状況(平成2年分No.1)
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別表八の2 絵画の売買状況(平成2年分No.2)
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別表九の1 絵画の売買状況(平成5年分No.1)
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別表九の2 絵画の売買状況(平成5年分No.2)
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別表一〇の1 絵画の売買状況(平成6年分No.1)
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別表一〇の2 絵画の売買状況(平成6年分No.2)
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別表一〇の3 絵画の売買状況(平成6年分No.3)
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別表一一 絵画の売買状況(平成7年分)
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別表一二
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(別紙)
原告の絵画の売却状況は次のとおりである。
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